vision

福井県の特徴

将来像を描くにあたり、県民の皆さんからいただいた意見をもとに、福井県の良さや課題を明らかにします。

1. 自然や食の豊かさ

本県は、越前海岸や若狭湾から奥越の山々まで、海と山が近く、また田園の広がる平野や清流をたたえる河川・湖沼も有するなど、「越山若水」と称される豊かな自然・景観に恵まれた地域です。また、食材も豊富であり、本県発祥のコシヒカリはもとより、新たに開発した「いちほまれ」や、地理的表示保護制度(GI)登録もされた「越前がに」をはじめとする里・海・山の幸、美味しい水を活かした地酒やおろしそば、梅干、半夏生(はんげしょう)鯖、へしこといった独自の食文化など、枚挙にいとまがありません。県民からは、こうした自然や食の豊かさを評価する意見が数多く寄せられました。

一方、県民自身がこれらの良さを当たり前のものと考え、価値に十分気付いていない、また、控えめな県民性のためか発信力が弱いという意見もありました。また、地域の人口減少が進むと、農林水産業や農山漁村の景観、食文化を含む地域の伝統文化などが損なわれるおそれもあります。

今後、自然・景観から生活文化までを含む「暮らしのランドスケープ(風景)」とも言える福井らしい風土を保全・継承するとともに、広く発信して国内外から多くの人を呼び込み、県民の誇りや自信につなげていくことが必要です。

2. 家族や地域のつながり

本県は、全国に比べて三世代同居・近居率が高く、住民同士のコミュニケーションも活発です。地域内では、子どもや高齢者の見守り、集落活動や行事などに世代を超えて協力するなど、家族・地域のつながりやコミュニティ機能がしっかり残されていることを評価する意見が多くありました。

また、平成16年7月福井豪雨(2004年)など災害時はもとより、普段の生活の中においても、県民の助け合い・支え合いの精神が至るところで発揮されています。

一方、そうしたつながりの強さが、かえって地域内での生きづらさや地域外からの入りにくさの一因になっているとの意見もありました。また、本県も全国と同様、三世代同居率は徐々に低下し、核家族化や単身世帯化が進んでおり、集落の高齢化・過疎化を懸念する声も多く聞かれました。

今後、新技術を活かすとともに、有償ボランティアも含めて域外の人たちと積極的に交流してその活力を取り入れ、つながりの良さを継承しながら、住民が減っても持続可能な地域コミュニティを実現していくことが重要です。

3. 充実した子育て教育環境

県民からは、子育てのしやすさや教育が充実していることを評価する声が多く聞かれました。子育ての面では、同居・近居する祖父母から育児への協力を得やすいこと、待機児童が少ないこと、多子世帯等への経済支援が充実していることなどが挙げられ、合計特殊出生率は全国上位を維持しています。教育面では、子どもたちの優れた学力・体力を支える教員の熱心さが評価されています。

一方、共働きが多い中で育児に加え家事・介護等も一人で担いがちな女性の負担の重さや、結婚・出産・子育てを当たり前に求められるなど多様な生き方・ライフスタイルが認められにくい風潮を指摘する声もありました。

多様な生き方や価値観を互いに認め合いながら、家族が支え合い、希望する出産・子育てが叶う社会をつくるとともに、子どもたちの学力だけでなく、スポーツ・文化など様々な個性を引き出す教育を進めていくことが必要です。

4. 人材力の高さ

福井県民は、県民性が穏やかであり、進学率や就業率の高さに象徴されるように勤勉・まじめで教育水準も高いことが特徴です。本県からはこれまで、政治・経済・学術・文化など様々な分野に優れた人材が生まれ、国内外で活躍してきました。

一方、県民はまじめな反面、安定志向が強い、あるいは優れた人材は県外に進学し、戻ってこないといった意見もありました。

これからの人口減少社会、そして変化の激しい時代にあって、ふるさとを担う人材はとても大切です。県民が変化に対応して柔軟に知識・技能を高め、様々なことに挑戦できる環境をつくるとともに、子どもたちのふるさと教育を進めていくことが重要です。

5. 安定した産業雇用基盤

本県は、眼鏡や繊維に代表されるように製造業の盛んなものづくりの県です。オンリーワンの技術を持ち、世界一や日本一のシェアを誇る企業が数多くあります。また、丹南地域を中心に、1500年の伝統がある和紙や漆器をはじめとした伝統工芸が受け継がれており、ブランド化や産地観光など新たな動きも生まれています。お米をはじめ農林水産業も地域に根差しています。こうした産業の集積により、県民の就業率や正規就業割合が全国上位にあるなど雇用環境も良好です。産業や雇用の安定は、くらしの質の高さの確かな土台になっていると考えられます。

一方、若者が大都市圏に流出する中、若者や女性に魅力ある仕事が足りない、また都市部に比べて賃金など雇用条件が低いといった意見も県民から寄せられました。

今後、技術革新を活かして生産性を高めるとともに、新幹線開業を活かした観光・交流をはじめ、健康・医療、宇宙・航空、食、エネルギーなど様々な分野で価値を生み出す魅力ある産業・企業を増やし、持続可能な循環型の経済・産業基盤をつくっていくことが必要です。